医師警鐘!自粛期間明け、急な暑い日の外出…に要注意! 知らずの脱水は感染症リスクも上げる!


新型コロナウィルスの感染が収束せぬまま、“熱中症大国”でもある日本において、本格的な熱中症シーズンに突入してしまいました。昨年は5月から9月だけでも、全国で熱中症により71317(※)が熱中症で救急搬送され、内、重傷者が1889人、死者が129人にのぼりました。まだまだ新型コロナウィルス患者対応に追われる医療機関にこの規模の搬送者がプラスされては、なんとか踏みとどまっている医療崩壊の危機を再び助長することになります。高気温傾向も予想される本年、例年にも増してますます警戒を強め対策する必要があります。実は、熱中症が重症化すると集中治療室に入室し人工呼吸や透析、ECMO(人工肺とポンプを用いた体外循環回路による治療)の管理まで必要な場合があります。熱中症で救急搬送されることで医療従事者の負担を増やしてしまったり、院内感染のリスクを増やすような事態を避けるべく、また、救急車のたらい回しのような患者さんにとって不幸な結果を招くことのないように熱中症ケアの理解を高めて実践していきましょう。

 ※2019年5~9月 総務省消防庁集計                

 

3度の食事を栄養バランス良くきちんと摂り、水分とあわせ塩分、カリウムなどの電解質の摂取を怠らず、充分休養して自律神経を活性化させ、適度な運動をして筋力を維持するなどが熱中症の予防法です。

しかし、日常生活においてこれらの条件を万全に適えられない時もあるものです。炎天下や激しい運動をするなど、明らかは熱中症リスクのある環境でなくとも、気づかぬうちに軽度の熱中症を起こしてしまうリスクは低くはありません。

なんとなく食事を抜いてしまっている、寝不足、前の夜にアルコールをたくさん飲んでしまった…そんなちょっとした脱水状態から油断をしていると熱中症につながることもありえます。

また、脱水状態は、免疫力を低下させ、感染症の罹患リスクを上げる一因にもなりえます。熱中症になるような健康リスクを放置していることは、新型コロナウィルスはじめ、自粛明けの生活の中での感染リスクも放置することにもつながります。

 

 「これって、脱水症?熱中症?」

そんな軽度の脱水・熱中症の時点で重症化を回避する方法をきちんと知っていますか? 医療現場に負荷をかけない、患者さんの重症化を防ぐためにも、正しい軽度熱中症の見分け方と対処法を知っておきましょう。 「教えて!『かくれ脱水』委員会」副委員長 谷口英喜先生に伺います。

 

 

【監修】

済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/周術期支援センター長/栄養部部長/

「教えて!『かくれ脱水』委員会」副委員長 医師 谷口英喜

 

専門は麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理など。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、TNT-Dメディカルアドバイザー。1991年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究」。著書「熱中症・脱水症に役立つ 経口補水療法ハンドブック 改訂版」

『イラストでやさしく解説!「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本』

 

 

緊急搬送されない、重篤化させない。

そのために、かくれ脱水の兆候に気づき、早めの脱水ケアを。

コロナの軽度の症状にも似ている!?軽度熱中症の症状を知っておきましょう。

 

 

熱中症は症状によりⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度と分類されます。

 


めまいやたちくらみを自覚する

筋肉痛やこむら返り(脚がつる)がある

拭いても拭いても汗が出てくる


言動がおかしいなど意識障害を認める

頭痛、悪心(吐き気)/嘔吐を認める

疲れやだるさといった全身倦怠感を自覚する


意識障害を認める

けいれんが起こる

体温が高くなる

 


熱中症の初期症状(Ⅰ度)は
「だる・ふら・いた」=「身体がだるい」・「頭がフラつく」・「筋肉が痛い」だといわれています。

 

熱中症の初期症状

 

通常、人の身体は健康であれば、脳を含む内臓にも必要な水分が十分いきわたり、特に水分を貯蔵するもっとも大きな臓器である筋肉を正常に動かすことができます。しかし、脱水を起こしていると、これらに必要な血液がいきわたらないことで栄養素もいきわたらず、体調不良を起こします。

 実はこれらの症状、新型コロナウィルス感染時の「倦怠感」・「風邪のような頭痛・ぼーっとする」・「身体の痛み」と似ているともいえます。

心あたりのないままに脱水(かくれ脱水)に陥っている軽度の熱中症の状態を、「風邪?新型コロナウィルスに感染した?」などと心配になってしまう人もいるかもしれません。

 

※マスク熱中症のリスク、高齢者と子供達は要注意

今年は、マスクを着用した生活のために熱がこもりやすくなり、外出、ジョッギングなどのスポーツなど、日常生活そのものに、大きなリスクが潜んでしまいました。

加えて、マスクをしたままだと、人は口渇の鈍化(マスク内の湿度があがっていることで喉の渇きを感じづらくなる)傾向になります。

もともと喉の渇きに気づきづらい高齢者は、ますます気づきづらくなり、知らないうちに脱水が進み、熱中症リスクも高まると考えられます。

運動会や、公園での遊びなど、子供たちのリスクも高くなっています。もともと大人に比べると体温調節の機能が未発達であり、集団での活動の場合は物事に熱中しやすい時期ですから、喉の渇きや体の変化に気づきにくいと言えます

 

 

「なんとなく熱中症っぽい…?」 疑わしいときはまず、経口補水液療法を試してみる。

 めまいやたちくらみを自覚する、筋肉痛やこむら返り(脚がつる)がある、拭いても拭いても汗が出てくる、だるいなどといった熱中症が疑われる症状が出た場合は、まず、

・いまいる環境の気温が高すぎないか?湿度が高すぎないか?

・食欲がなく、食事を抜いていないか・十分な量を食べているか?

・水分を摂るのを忘れていないか?

食事のたびに最低コップ1杯、食間にも最低1杯、寝る前に1杯の水分を摂っていたか

・前日や当日、アルコールを飲みすぎていないか?

 

を思い起こし、部屋の温度・湿度を快適だと感じるまで下げる、気持ち悪くて食べられないなどでなければ食事を摂る、水分摂取をしてみる、を試してください。

食事や水分を充分摂取できないと、脱水症を起こしている可能性があります。この場合はまず、塩分などの電解質と水分が効率的に吸収される濃度で配合されている経口補水液を、ペットボトル一本分(500ml)飲む、「経口補水療法」を試してみることをおすすめします。

 

 

「経口補水療法」とは?

 もともとはコレラの大流行時に、下痢による脱水症を治療するための点滴が十分に確保できない患者に対し、電解質と水分が素早く吸収されるように調製された経口補水液を口から飲ませることで点滴同様の効果が得られると発見された治療法で、「20世紀最大の医学的進歩」とも評されています。本邦でも経口補水療法のメリットが注目され、各医療機関等でも実施されるようになってきました。

小腸での水分吸収においては、「ナトリウム・ブドウ糖共輸送機構」というメカニズムが働いており、1Lあたりブドウ糖20g(砂糖40g)に対し、ナトリウム(塩)3 gの比率で含まれる水分が効率よく吸収されることがわかっています。この比率を叶えている経口補水液を飲むことで、脱水症状を素早く改善するのが「経口補水療法」です。この経口補水療法を暑熱環境での過度の発汗による脱水症にも応用していきましょう。

 

※経口補水液の成人の1日あたり目安量は、500mlペットボトルを1~2本。脱水状態に応じて適宜増減してください。

※ナトリウムやカリウムの摂取制限を受けている方は必ず医師の指導を受けてから飲んでください。

 

軽度の脱水であれば、飲用後20~30分程度経過をみると、だんだん体調が回復してくることが多いです。

「軽い熱中症かも?」と思ったら、涼しい場所に移動して経口補水液を飲んで経過をみてみることで、脱水が改善され、各症状が取れてくる可能性もあります。

 

もしも、数時間経っても症状が快復しない、ますます悪化するようであれば、脱水症以外の疾病の可能性があります。安静にし、食事・水分摂取・休養をこころがけても症状がひどく悪化するようだったら万全の感染予防をしたうえで、迷わず病院を受診しましょう。

 

 

熱中症の緊急度をシンプルに確認する方法

 

度、Ⅲ度以上の重度の熱中症を見分けるためには、以下の2点を確認します。

意識がはっきりしている   → Ⅰ度の場合、現場で応急処置対応。そばに付き添い、経過を見る。

言動がおかしい、意識がない → Ⅱ度以上の状態。救急車で病院へ搬送する

「言動がおかしい」、「いつもと違う」、「自分で経口補水液を飲むことができない」と思ったら、現場で対応可能なⅠ度を超えていると判断できます。すぐに救急車を呼んで病院へ運びます。

意識がしっかりあるようなら、身体を冷やし、冷たい経口補水液で水分と電解質を補います。自分で経口補水液を飲むことができ、1020分して症状が収まってくれば、ひとまず危機は脱したと考えられます。それでも回復しない場合はやはり救急車を呼ぶべきです。

 

 

熱中症になったときにとるべき行動の基本、「FIRE」=“ファイヤー”

これは、熱中症の応急処置の下記4項目の頭文字を並べてキーワード化したものです。

 

F

Fluid 

水分補給

・冷やした経口補水液を飲みたいだけたくさん飲ませる。

 

I

Icing 

身体を冷やす

・エアコンで部屋を冷やし、扇風機で風を送る。

・首筋、脇のした、鼠蹊部などをよく冷えたペットボトルや氷嚢で冷やす。

・体温が異常に上昇している場合は、下着の上から霧吹きで水を吹きかけ、気化熱で体温を冷やす。

R

Rest 安静

症状が回復してきても、ゆっくりし、しばらくは安静に。

明らかに回復してから行動。

E

Emergency 救急搬送/119

すでに意識がない、自分で水分を摂れないくらいの意識障害を起こしている場合は、

すみやかに、E(Emergency 救急搬送/119番)を行ない、周囲の人が近くの医療機関へ連れて行くか、救急車を呼んでください。

大切なのは、熱中症が疑われる人をひとりにしないこと。

まわりに人がいなくなると、身体の冷却や水分補給で症状が回復しない場合、意識が失われて重症化を見逃す恐れがあります。

 

 熱中症の人には必ず誰かが付き添い、現場での対応で症状が回復するかどうか、きちんと経過を追うことが大切です。